Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

曽根原 拓実

スペイン

バルセロナでの修士研究留学

曽根原 拓実さん

総合理工学研究科  工学専攻 情報数理・融合システム分野
留学期間:2026年4月~2026年9月
留学先:カタルーニャ工科大学

留学先大学について
カタルーニャ工科大学(Universitat Politècnica de Catalunya、通称UPC)は、1971年に創立されたスペイン・カタルーニャ州の公立工科大学です。工学・建築・理学の分野に特化しており、バルセロナを中心に州内6都市にキャンパスを構え、3万人以上の学生が在籍しています。私が拠点としたのは、バルセロナ市内にあるキャンパス・ノルド(Campus Nord)です。電気通信系や情報系の学部が集まるキャンパスで、海外からの留学生や研究者も多い国際的な環境です。

学習面について
今回の留学は、形式上は交換留学でしたが、授業を履修するのではなく、修士論文の研究を現地で進める「研究留学」でした。きっかけは、2025年にUPCの学生が約半年間、留学生として私の所属研究室に滞在した際に、一緒に研究を始めたことです。彼の帰国後もオンラインで共同研究を続け、さらに深めるために、今度は私がUPCに渡ることにしました。

現地では共同研究者と研究を進めながら、2週間に1度、UPCの先生の研究室で進捗を発表し、受けた指摘を反映させていきました。ただ、発表や議論はすべて英語で、専門用語も多いため、当初は議論についていくことも、自分の考えを的確に伝えることも容易ではありませんでした。

発表を重ねる中で特に強く感じたのは、研究に求められる水準の高さです。毎回、論文としての完成度を上げるために何が不足しているのか、手法そのものを再検討すべきではないかといった点について、率直な指摘を受けました。これは、国際会議や論文誌での評価を初期段階から見据え、高いレベルで研究が進められていたからこそだと思います。一方で、指摘はそれだけで終わるものではなく、その場で先生や周りの方々が改善のアイデアを出してくださり、全員で議論しました。また、専門の異なる研究者と議論できたことにも大きな意義がありました。私の研究は通信と画像処理の両方にまたがっていますが、日本の所属研究室は画像処理を専門としているため、通信の観点からの議論は十分にできない部分がありました。その点、UPCでは通信を専門とする研究者から直接ご意見をいただき、自分の研究に欠けていた視点を補うことができました。このように、立場や専門の違いを越えて意見を交わし、ともにより良いものを目指す環境は、研究を磨き上げるうえで大きな力となりました。

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生活について

バルセロナは、天候と住環境に恵まれた街です。晴れの日が非常に多く、夏の暑さは厳しいものの、とても過ごしやすい気候でした。また、海と山のどちらにもアクセスが良く、街中にも緑が多いなど、都市でありながら自然を身近に感じられます。生活に必要なものもすべてそろっており、日常生活で不便を感じることは一度もありませんでした。物価は日本より少し高めですが、無理なくやりくりできる範囲でした。治安面ではスリへの注意がよく言われますが、荷物の管理など基本的なことに気をつけていれば、安心して過ごせました。言語面では、研究はすべて英語で行いましたが、観光地を除くと、街中では英語があまり通じません。そのため、スーパーなどでは簡単なスペイン語を使っていました。渡航前に、日常会話程度のスペイン語を身につけておくとよいと思います。

住居は、共同研究者の紹介で見つけることができました。ただ、これはかなり幸運なケースです。バルセロナは一般に家賃が高く、物件探しにも苦労すると聞きます。これから留学する方は、早めに準備を始めることをおすすめします。

研究以外の場でも、多くの人との交流がありました。バルセロナには世界各国から学生が集まっており、滞在中に開催されたサッカーのワールドカップでは、さまざまな国の友人と一緒に試合を観戦しました。自国だけでなく互いの国のチームを応援する時間は、それぞれの国の文化を知り、尊重し合う良い機会でした。このほかにも、現地のお祭りでボランティアをしたり、チャリティーマラソンに参加したりしました。こうした活動を通じて、現地の人々や地域社会とつながりを持てたことも、大切な経験となりました。

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留学で得たこと
留学で得たものとして、まず語学力と異文化理解があります。英語で研究を進める日々を通じて語学力が鍛えられ、さまざまな国の人と過ごす中で、文化や価値観の違いを知り、受け入れる姿勢が身につきました。そのうえで、研究と生活の両面において、自分の考え方や行動そのものが変わったと感じることが2つあります。

1つ目は、限られた時間の中で成果を出す意識です。現地では、始業時間に幅があったり、在宅で作業する日があったりと、働く時間や場所は比較的自由でした。その一方で、決めた時間の中できちんと結果を出すことが前提となっており、時間の長さよりも中身が重視されていました。私自身も、その日に何をどこまで進めるかを意識して研究に取り組むようになりました。

2つ目は、自分の考えを持ち、それをはっきり伝える力です。バルセロナでは、日常のちょっとした場面から社会的な話題に至るまで、思っていることを言葉にするのが当たり前でした。日常の場面では、日本のように相手の様子をうかがって判断するのではなく、自分が何をしたいのかを伝えることが大切にされていました。実際に、私が曖昧な返事を繰り返していたときには、「なぜYesかNoかをはっきり言わないのか」と言われたこともありました。社会的な話題についても同様です。日頃からニュースに触れ、自分なりの考えを持っている友人たちとは、政治や文化、そして近年急速に広がるAIなど、さまざまなテーマについて率直に意見を交わしました。こうした環境で過ごすうちに、私も次第に、遠慮して言葉を飲み込むのではなく、自分の意見を根拠とともに伝えられるようになりました。この姿勢は、社会に出てからも持ち続けたいと考えています。

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後輩へのアドバイス
留学には「研究留学」という選択肢もあります。日本で研究を続けることにももちろん価値はありますが、海外の先生のもとや研究機関で、現地の研究者と議論を重ねることで、日本とは異なる視点や刺激を得ることができます。さらに、学業と両立しやすいという利点もあります。私はM1のうちに修了に必要な授業の単位を取り終え、共同研究を進めながら就職活動も済ませていました。そのため、留学中は修士論文の研究に専念でき、休学や留年をせずに修了する見通しです。留学が卒業時期や就職活動に影響することを心配している方にも、取り組みやすい形だと思います。

また、信州大学には、UPC以外にも世界中に協定校があります。行き先を考えるとき、現地の言語を知らない国は候補から外し、アメリカやオーストラリアなど英語が公用語の国をまず思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、私の体感では、ヨーロッパの大学で研究に携わるほとんどの学生が英語を話せます。英語圏にこだわらず、自分が行ってみたい国を選ぶのもよいと思います。

英語力や海外での生活など、不安に思うことも多いと思います。それでも、実際に行ってみれば案外なんとかなるものだと、私は感じています。迷っているのであれば、ぜひ一歩を踏み出してみてください。

知の森基金へのメッセージ  
今回の留学にあたり、知の森基金を通じてご支援いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。円安の影響もあり、約5ヶ月間の滞在には大きな費用がかかりましたが、ご支援のおかげで、海外で研究に打ち込むという貴重な機会を得ることができました。この経験を、今後の研究や仕事に活かしてまいります。